1. TOP
  2. ニュース&トピックス
  3. CentOS EoL 対応_AlmaLinux 移行・PHP アップグレード・AI によるソースコード変換(Rust 化を含む)の実現可能性と注意点
Technical Term

CentOS EoL 対応_AlmaLinux 移行・PHP アップグレード・AI によるソースコード変換(Rust 化を含む)の実現可能性と注意点

トピックス

1. エグゼクティブサマリー

CentOS は 7 系・8 系ともにサポートを終了しており、OS だけでなく同梱・追加導入された PHP(5.x / 7.x 系)も既にセキュリティ修正が提供されない状態にあるケースが大半です。本資料では、①OS の AlmaLinux への置き換え、②PHP のサポート版へのアップグレード、③AI を用いたソースコード変換(同一言語内のモダナイズ、および Rust など他言語への変換)について、実現可能性と注意点を整理します。

テーマ  実現可能性 要点
① OS:CentOS → AlmaLinux  高い RHEL 互換で移行実績が豊富。新規構築+アプリ移設を推奨。In-place(ELevate)も選択肢。
② PHP:5.x/7.x → 8.3/8.4 高い Rector 等の決定論的ツール+AI+テストで現実的に実施可能。互換性破壊の洗い出しが鍵。
③-a AI による PHP モダナイズ 高い 同一言語内の変換は AI が得意な領域。大規模事例でも工数削減効果が報告されている。
③-b AI による PHP → Rust 変換 条件付きで可能 稼働事例あり。ただし「テストで同等性を証明できる範囲」に限定し、段階的に進めることが前提。

推奨方針(結論)
Step 1: まず「OS 移行+PHP 8.x へのアップグレード」でサポート切れリスクを早期に解消する(守りの施策)。
Step 2: その上で、性能・保守性・セキュリティ上の効果が大きい機能から、AI を用いて Rust へ段階的に置き換える(攻めの施策)。
理由: 一度に「OS・言語・コード」すべてを変えると、障害発生時に原因の切り分けが困難になり、移行期間中も脆弱な旧環境が残り続けるため。

2. 背景と現状のリスク


2.1 CentOS のサポート終了
CentOS Linux 8 は 2021年12月31日に、CentOS Linux 7 は 2024年6月30日にそれぞれサポートを終了しました。以降、OS パッケージ(カーネル、OpenSSL、glibc、httpd 等)へのセキュリティ修正は提供されていません。CentOS Stream は RHEL の開発ブランチという位置づけで、長期安定運用を前提とした置き換え先とは性質が異なります。


2.2 PHP のサポート状況
PHP は 2024年3月にリリースサイクルが変更され、各ブランチは「2年間のバグ修正+2年間のセキュリティ修正」の計4年間サポートされます。2026年10月時点の状況は以下のとおりです。

バージョン リリース アクティブサポート終了 セキュリティサポート終了 状態(2026/10)
PHP 5.x / 7.x — — 7.4:2022/11/28 EoL(危険)
PHP 8.0 2020/11 — 2023/11/26 EoL(危険)
PHP 8.1 2021/11 — 2025/12/31 EoL(危険)
PHP 8.2 2022/12 終了 2026/12/31 残り約2か月
PHP 8.3 2023/11 2025/12/31 2027/12/31 セキュリティ修正のみ
PHP 8.4 2024/11 2026/12/31 2028/12/31 サポート中
PHP 8.5 2025/11 2027/12/31 2029/12/31 サポート中(最新)


出典:php.net / endoflife.date(2026年時点)。ディストリビューション(AlmaLinux 等)が提供する PHP は、上流 EoL 後もディストリビューション側でバックポート修正が続く場合があります(2.3 参照)。


2.3 「OS 同梱 PHP」と「上流 PHP」のサポート期間の違い
RHEL 系の AppStream で提供される PHP は、上流(php.net)の EoL とは別に、ディストリビューション側の「アプリケーションストリームのライフサイクル」に従ってセキュリティ修正が提供されます。一方で、AppStream のモジュールストリームは OS 本体(10年)より短いサイクルで提供終了となるため、「OS が 2032年までサポートされる=PHP も 2032年まで使える」ではない点に注意が必要です。Remi リポジトリ等で上流の最新版を入れる場合は、上流の EoL に従います。


2.4 放置した場合のリスク
●    公開済み脆弱性(OS・PHP・ミドルウェア)が修正されず、既知の攻撃手法で侵害されるリスクが継続的に増大する。
●    PCI DSS、ISMS、各種ガイドライン(IPA 等)・取引先のセキュリティ監査で「サポート切れソフトウェアの使用」が指摘事項となる。
●    Composer パッケージやフレームワークが旧 PHP のサポートを打ち切り、ライブラリ側の脆弱性修正も適用できなくなる。
●    旧 OS 上では新しい TLS 設定・証明書・暗号ライブラリに追随できず、外部 API 連携が突然停止する。


3. 移行先 OS:AlmaLinux


3.1 AlmaLinux の概要
AlmaLinux は非営利の AlmaLinux OS Foundation が所有・運営する、RHEL とバイナリ互換を目指したエンタープライズ Linux です。RHEL と同様に各メジャーバージョンが約10年のライフサイクルを持ち、RHEL の更新から概ね1営業日以内に追随することを目標としています。商用サポートはサードパーティ各社から提供されています。


3.2 バージョン別の比較

項目 AlmaLinux 8 AlmaLinux 9 AlmaLinux 10
サポート終了 2029年5月末 2032年5月末 2035年5月末
標準 PHP(AppStream)

 7.2(既定)

モジュールで 7.4 / 8.0 / 8.2 等

8.0(既定)

モジュールで 8.1 / 8.2 / 8.3

8.3
(モジュール機能は廃止)
Remi による新版 可 可 8.4 / 8.5 可
CentOS 7 からの In-place 可(ELevate:7→8) 可(7→8→9 の2段階) 不可(直接は想定外)
推奨度(新規構築時) 低(残り期間が短い) 中〜高 高(最長サポート)

注:AlmaLinux 10 は RHEL 10 と異なり x86-64-v2 世代の CPU もサポートしています。古いハードウェア・仮想基盤上での利用可否は事前に確認してください。


3.3 移行方式の比較

方式 概要 メリット デメリット・注意点
A. 新規構築+アプリ移設
(推奨)
AlmaLinux 9/10 を新規に構築し、アプリ・データを移す クリーンな環境。旧来の不要設定・不要パッケージを持ち込まない。切り戻しが容易(旧環境を残せる) サーバ台数分の構築工数。設定の棚卸しが必要
B. In-place 変換
(ELevate / Leapp)
既存 CentOS 7 を AlmaLinux 8 → 9 へその場でアップグレード IP・構成を維持しやすい。物理サーバで有効 2段階アップグレードが必要。サードパーティ RPM・カスタム設定で失敗しやすい。失敗時はバックアップから復旧
C. コンテナ化 アプリを AlmaLinux ベースのコンテナに移す 環境の再現性が高く、以後の OS 更新が容易 運用体制(イメージ更新・監視)の整備が必要

   
3.4 ELevate(In-place 変換)の手順概要
ELevate は Red Hat の Leapp フレームワークをベースに、AlmaLinux が他ディストリビューション間の移行用に拡張したツールです。代表的な流れは以下のとおりです。
1.    対象サーバのフルバックアップ/スナップショット取得(必須)
2.    CentOS 7 を最新状態に更新し再起動(EoL 後はアーカイブリポジトリを参照)
3.    elevate-release、leapp-upgrade、leapp-data-almalinux をインストール
4.    leapp preupgrade を実行し、/var/log/leapp/leapp-report.txt の阻害要因(inhibitor)を解消
5.    leapp upgrade → 再起動で AlmaLinux 8 へ。同様の手順を繰り返して AlmaLinux 9 へ
6.    残存する el7 パッケージの確認・削除、サービス動作確認

現場での注意点
ELevate による OS 変換が成功しても、PHP は OS 側の既定バージョンへ強制的に変わる(例:7.x → AlmaLinux 8 の 7.2 → 9 の 8.0)。アプリが動く保証はないため、PHP アップグレード作業(第4章)とセットで計画すること。
Remi / IUS / 独自ビルドの PHP、ionCube 等の暗号化ローダ、独自カーネルモジュールは阻害要因になりやすい。

3.5 AlmaLinux 9 / 10 で影響が出やすい OS 側の変更点

領域 変更内容 影響例
暗号ポリシー(crypto-policies) DEFAULT ポリシーで SHA-1 署名、TLS 1.0/1.1 等が無効化 古い取引先システム・古い SSH 鍵・旧証明書との接続失敗
OpenSSL 3.x レガシーアルゴリズムは legacy プロバイダ扱い PHP の openssl_* 関数で古い暗号方式(DES、RC4 等)が使えない
SELinux(Enforcing 既定) httpd/php-fpm の外部接続・書き込み先が制限される DB や外部 API への接続失敗、アップロード失敗。「とりあえず無効化」は厳禁
ファイアウォール firewalld が標準 iptables 前提の運用手順の見直し
PHP 実行方式 mod_php ではなく PHP-FPM が標準 .htaccess の php_value 設定が効かない、実行ユーザーの変化
ネットワーク設定 NetworkManager(keyfile 形式)へ移行 ifcfg ファイル前提のスクリプトの修正

4. PHP アップグレード

4.1 ターゲットバージョンの選定

選択肢 想定ケース 注意点
AlmaLinux 10 標準 PHP 8.3

OS ベンダの修正提供に乗りたい。

運用をシンプルにしたい

上流サポートは 2027年末まで。以降はディストリ側のバックポートに依存
Remi の PHP 8.4 上流サポート期間を長く確保したい(2028年末まで) サードパーティリポジトリの信頼性評価・更新運用が必要
Remi の PHP 8.5 最新機能・最長サポート(2029年末まで)を優先 一部の拡張・商用ローダ・フレームワークの対応状況を要確認

推奨:新規構築なら AlmaLinux 10 + PHP 8.4(Remi)または 8.3(標準)。フレームワーク・拡張の対応状況で決定する。PHP 8.2 は 2026年12月末で EoL のため新規採用は避ける。


4.2 主な互換性破壊(PHP 5.x / 7.x → 8.x)

移行元 代表的な破壊的変更 典型的な症状
PHP 5.x → 7.0 mysql_* 関数、ereg 系関数の削除。PHP 4 形式コンストラクタの非推奨 致命的エラーで画面が真っ白になる
7.x → 8.0 each()、create_function() の削除。文字列と数値の比較ルール変更("abc" == 0 が false に)。多くの警告が例外(TypeError 等)に昇格 認証・分岐ロジックが静かに変わる(最も危険)
8.0 → 8.1 内部関数への null 渡しが非推奨 大量の Deprecated ログ
8.1 → 8.2 動的プロパティの非推奨 古いクラス設計でログが溢れる
8.2 → 8.4/8.5 暗黙の nullable 型の非推奨など 将来バージョンでのエラー化

セキュリティ観点で特に注意すべき点
比較演算子の挙動変更(PHP 8.0)は、認証・権限チェック・トークン比較のロジックを「エラーを出さずに」変える可能性がある。== を使った比較箇所は全件レビューし、=== と hash_equals() へ置き換えること。
mysql_* から mysqli/PDO へ機械的に置き換える際、文字列連結による SQL 組み立てをそのまま残すと SQL インジェクションが残存する。プリペアドステートメント化を同時に行うのが望ましい。
日本の業務システムでは Shift_JIS / EUC-JP のデータやソースが残っていることが多い。mbstring の既定設定変更(mbstring.func_overload の廃止等)で文字化け・データ破損が起きやすい。


4.3 ツールと進め方

ツール 用途 特徴
Rector 自動リファクタリング・アップグレード AST ベースの決定論的変換。PHP 5.3 → 8.4 までのルールセットあり。バージョンを段階的に上げて適用するのが定石
PHPCompatibility(PHP_CodeSniffer) 非互換箇所の静的検出 対象バージョンを指定して、削除関数・構文の使用箇所を一覧化
PHPStan / Psalm 静的解析・型検査 レベルを段階的に上げ、型の不整合や未定義変数を検出
生成 AI(Claude 等) ルールで変換できない箇所の修正、テスト生成、Rector カスタムルールの作成 柔軟だが非決定的。必ず差分レビューとテストで検証

推奨される順序: ① 静的解析で非互換箇所を一覧化 → ② 特性テスト(現状の振る舞いを記録するテスト)を整備 → ③ Rector でバージョンを1段ずつ上げる → ④ Rector で処理できない箇所を AI で修正 → ⑤ テスト・差分レビュー → ⑥ ステージング環境で本番相当データによる検証。
「Rector の決定論的変換を主、AI を従」とすることで、AI 特有の揺らぎ(同じ入力でも出力が変わる、不要な変更を混ぜる)を最小化できます。

5. AI によるソースコード変換


5.1 2つのパターン

パターン 内容 難易度 実現可能性
同一言語内のモダナイズ 旧 PHP → PHP 8.x、旧フレームワーク → 新フレームワーク 中 高い
異言語への変換 PHP → Rust / Go / Java 等 高 条件付きで可能

         
5.2 大規模事例:Google のコード移行
Google は社内の大規模コード移行(32bit ID から 64bit ID への変更)に LLM を活用した事例を論文で公開しています。1年間のケーススタディで、提出された 595 件の変更(93,574 箇所の編集)のうち、約 74% の変更が LLM によって生成され、開発者は移行時間が約 50% 短縮されたと評価しました。


重要なのは、この仕組みが「AI に丸投げ」ではなく、変更箇所の機械的な特定 → LLM による修正 → 複数段階の自動検証 → 人間のレビューという構成になっている点です。検証に通らなかったファイルは人手での対応に回されています。また論文では、LLM の非決定性やハルシネーション(不要な変更の混入)が課題として挙げられています。


5.3 PHP → Rust 変換について
(1) 稼働事例
相談者が把握している範囲では、AlmaLinux への切り替え後に PHP の利用をやめ、AI を用いてソースコードを Rust に変換し、問題なく稼働している企業が存在します。これは、適切な進め方をとれば PHP → Rust の AI 変換が実運用レベルで成立し得ることを示す有力な事例です。お客様への提案時には、可能であれば当該事例の「対象システムの規模・種類」「テストの整備状況」「変換に要した期間と体制」を確認し、お客様の環境との比較材料にすることを推奨します。


(2) 学術研究から見える傾向
LLM による異言語変換の研究は C → Rust を中心に急速に進んでいます。2026年に発表された MinsC2Rust の評価では、コンパイル成功率 98.4% に対し、実行結果が正しかった割合は 42.6% でした。つまり、「コンパイルが通る」ことと「元のプログラムと同じ動作をする」ことの間には大きな差があるため、検証の仕組みが成否を分けます。
また、Java/PHP/C などから Python/Go/Rust への LLM 変換をセキュリティ観点で評価した研究では、変換の過程で脆弱性が混入しうることが報告されています。Veracode の 2025年の調査でも、AI 生成コードの約 45% のケースで OWASP Top 10 に分類される脆弱性が混入したと報告されています。


(3) PHP と Rust の違いから生じる変換上の落とし穴

領域 PHP の性質 Rust 変換時の注意点
型システム 動的型付け・緩い型変換 暗黙の型変換("10" + 5 等)の意図を明示的に再現する必要。仕様化されていない挙動の取りこぼし
配列 順序付きハッシュマップ(リストと辞書を兼用) Vec / HashMap / IndexMap の選択。キー順序の保持、数値文字列キーの自動変換
比較演算  == の緩い比較 元コードが依存していた比較結果を正確に再現(認証系は特に重要)
文字コード バイト列として文字列を扱う。mb_* 関数 Rust の String は UTF-8 必須。Shift_JIS/EUC-JP データは encoding_rs 等で明示的に変換
正規表現 PCRE(後方参照・先読み可) regex クレートは後方参照・先読みに非対応。fancy-regex 等の検討
シリアライズ serialize() / セッション形式 DB・キャッシュに保存済みのデータとの互換性。移行期間中の PHP/Rust 共存
パスワード password_hash()(bcrypt 等) 既存ハッシュを検証できる互換実装の採用。再ハッシュ方針
テンプレート HTML と PHP の混在   Askama / Tera 等への分離。XSS 対策の自動エスケープ設定の確認
実行モデル リクエストごとに状態が破棄 常駐プロセスでのグローバル状態・メモリ管理、非同期処理(tokio)の設計
エコシステム Composer パッケージ・フレームワーク 同等のクレートの有無。メール送信、PDF、帳票、決済 SDK 等は代替の確認が必要

     
(4) Rust 化が向いているケース/向いていないケース

向いているケース 慎重に判断すべきケース
性能・リソース効率が課題(高負荷 API、バッチ処理) お客様側に Rust を保守できる人材がいない/確保の見込みがない
メモリ安全性・型安全性による品質向上を重視 仕様書・テストがなく、現行の振る舞いが誰にも説明できない
機能単位に分割しやすい API 中心の構成 画面(HTML)とロジックが密結合した大規模な画面系システム
テスト・ログ・本番トラフィックで同等性を検証できる WordPress・EC-CUBE 等、既製 PHP パッケージをベースにしたシステム

保守性の観点(お客様の長期的利益)
AI で変換したコードは「動く」だけでなく、お客様(または委託先)が将来も読んで修正できることが重要です。変換後のコードの所有者・保守担当・技術者育成の計画を、変換作業と同時に決めておくことを推奨します。


5.4 AI 変換を成功させるための進め方
1.    特性テスト(Characterization Test)を先に作る: 現行 PHP の入出力を記録し、「正解データ」とする。AI はテストケースの生成にも有効。
2.    機能単位で段階移行(Strangler Fig パターン): リバースプロキシで一部の URL だけ Rust 側へ振り分け、少しずつ置き換える。
3.    差分テスト/シャドートラフィック: 本番リクエストを複製して PHP 版と Rust 版の双方に流し、応答の差分を自動比較する。
4.    決定論的な検証ゲート: cargo build / clippy / テスト / SAST / cargo audit をすべて通過したものだけを人間のレビューに回す。
5.    人間によるレビューを省略しない: 特に認証・認可・決済・個人情報を扱う箇所は、セキュリティエンジニアのレビューを必須とする。
6.    切り戻し手段を常に確保: 振り分け設定を戻すだけで PHP 版へ戻せる状態を維持する。


6. セキュリティ・ガバナンス上の注意点


6.1 ソースコードを AI に渡す際の注意
●    契約確認: お客様のソースコードを外部の AI サービスに入力することが、業務委託契約・NDA で許容されているかを事前に確認し、書面で合意を得る。
●    サービス選定: 入力データが学習に利用されない法人向けプラン・API を利用し、データ保持期間・保存リージョンを確認する。
●    秘密情報の除去: DB パスワード、API キー、証明書、個人情報(テストデータ含む)がソースや設定ファイルに埋め込まれていないかをスキャン(gitleaks、trufflehog 等)し、除去・ローテーションしてから AI に渡す。
●    ログ・証跡: どのコードをどの AI に、いつ、誰が入力したかを記録する。


6.2 生成コードの検証

観点 推奨する対策
静的解析(SAST) PHP:PHPStan、Psalm(taint 解析)、Semgrep / Rust:clippy、Semgrep
依存関係(SCA) Composer:composer audit / Rust:cargo audit、cargo deny。SBOM(CycloneDX 等)を作成
サプライチェーン AI が提案した見慣れないパッケージ名(タイポスクワッティング・実在しないパッケージ)を必ず確認
unsafe の管理 Rust 版では unsafe ブロックを原則禁止(#![forbid(unsafe_code)])。必要な場合は理由を明記しレビュー
動的検査(DAST) OWASP ZAP 等で移行前後の診断結果を比較。ペネトレーションテストの実施
ロジック同等性 認証・認可・入力検証・出力エスケープ・CSRF 対策が移行後も欠落していないことを個別に確認

6.3 移行期間中のリスク
移行プロジェクトが長期化すると、その間ずっと EoL 環境がインターネットに露出し続けます。移行完了までの暫定策として、以下を検討してください。
●    WAF の導入・ルール強化、管理画面へのアクセス元 IP 制限
●    CentOS 7 向け延長サポート(商用 ELS)の一時的な利用
●    外部公開範囲の最小化、ログ監視・改ざん検知の強化


7. 推奨ロードマップ(例)


期間は中規模システム(数万〜十数万行程度)を想定した目安です。規模・テストの有無により大きく変動します。

フェーズ 主な作業 期間目安 成果物
0. 現状調査 サーバ・ミドルウェア・PHP 拡張・外部連携・cron・文字コードの棚卸し。静的解析で非互換箇所を集計 2〜4週間 現状調査報告書、移行方式の決定
1. 暫定対策 WAF・アクセス制限・監視強化。必要に応じて ELS 契約 並行 暫定リスク低減
2. テスト基盤整備 特性テスト・E2E テストの作成(AI 活用)、ステージング環境の構築 3〜6週間 回帰テスト一式
3. OS 環境構築 AlmaLinux 9/10 構築、SELinux・crypto-policies・PHP-FPM 設定、構成管理(Ansible 等)化 2〜4週間 構築手順書、構成コード
4. PHP アップグレード Rector+AI による段階的変換、テスト、性能確認 1〜3か月 PHP 8.x 対応ソース
5. 本番切替 データ移行、切替リハーサル、切替、旧環境の一定期間保持 2〜4週間 切替完了報告
6.(任意)Rust 化 対象機能の選定、AI 変換、差分テスト、段階的振り分け 機能単位で継続 Rust 版機能、保守体制


8. リスクと対策一覧

リスク 影響 対策
PHP 8 の比較演算変更による認証ロジックの変化 高 == の全件レビュー、=== / hash_equals() への統一、認証系のテスト強化
AI 変換コードへの脆弱性混入 高 SAST・SCA・DAST、セキュリティレビューの必須化
AI 変換で仕様の取りこぼし(静かな不具合) 高 特性テスト、シャドートラフィックによる差分比較
文字コード(Shift_JIS 等)の扱いによるデータ破損 高 事前にデータ・ソースの文字コードを全数調査、変換テスト
ソースコード・機密情報の外部流出 高 契約確認、法人向け AI サービス、秘密情報の事前除去
ELevate の In-place 変換失敗 中 スナップショット取得、事前に複製環境でリハーサル
SELinux / 暗号ポリシーによる接続障害 中 ステージングで外部連携を全件テスト。SELinux は無効化せずポリシーで対応
Rust 化後の保守人材不足 中 保守体制・教育計画を事前に合意。段階移行で知見を蓄積
商用ローダ(ionCube 等)・独自拡張の非対応 中 ベンダの対応状況確認、代替手段の検討


9. お客様へのヒアリング項目

区分 確認事項
インフラ サーバ台数・物理/仮想/クラウドの別、CentOS のバージョン、ハードウェア世代(CPU)
PHP 環境 PHP バージョン、導入元(標準 / Remi / 独自ビルド)、使用中の拡張、ionCube 等の有無
アプリケーション フレームワークとバージョン、コード行数、Composer 利用有無、パッケージ製品(WordPress 等)か独自開発か
データ DB 種別・バージョン、文字コード、serialize 形式データの有無、ファイル保存先
外部連携 外部 API・メール・決済・帳票・バッチ(cron)・ファイル連携の一覧
品質 仕様書・テストコードの有無、現行の不具合・性能課題
体制・契約 保守担当者のスキル(PHP / Rust)、AI 利用に関する社内規程・契約上の制約
スケジュール・予算 期限(監査・契約更新等)、許容停止時間、予算規模

 
10. まとめ

CentOS からの移行は、OS 単体の問題ではなく、PHP・ミドルウェア・アプリケーションコードまで含めた「プラットフォーム全体の更新」として捉える必要があります。AlmaLinux への移行と PHP 8.x へのアップグレードは実績・ツールともに成熟しており、実現可能性は高いと評価できます。
AI によるソースコード変換は、同一言語内のモダナイズでは既に大きな効果が実証されており、PHP → Rust のような異言語変換も稼働事例が出てきています。成功の鍵は AI の性能そのものよりも、「同等性を機械的に証明するテスト」「段階的な移行と切り戻し手段」「セキュリティレビュー」という周辺の仕組みにあります。
お客様の状況(規模・テストの有無・保守体制)を第9章のヒアリング項目で把握した上で、まずは守りの施策(OS+PHP 更新)でリスクを早期に解消し、その後に攻めの施策(Rust 化)を段階的に進めることを推奨します。

参考資料


1.    PHP: Supported Versions(php.net)
2.    endoflife.date - PHP
3.    endoflife.date - AlmaLinux OS
4.    CERN Linux - Which distribution should I use?(AlmaLinux 8/9/10 サポート終了日)
5.    AlmaLinux Wiki - ELevating CentOS 7 to AlmaLinux 9
6.    Linux Magazine - AlmaLinux's ELevate Migration Tool
7.    ComputingForGeeks - Install PHP on AlmaLinux 10 / Rocky Linux 10 / RHEL 10
8.    Rector(GitHub)
9.    Migrating Code At Scale With LLMs At Google(論文要約)
10.    MinsC2Rust: LLM-driven project-level code migration from C to safe Rust(Empirical Software Engineering, 2026)
11.    When Code Crosses Borders: A Security-Centric Study of LLM-based Code Translation(arXiv)
12.    Veracode 2025 GenAI Code Security Report(プレスリリース)

記載者:片山 昌樹(セキュリティ&マネージド事業部 アイズオンフォレンジックチーム)

一覧に戻る