ランサムウェア「Qilin」の脅威分析:2026年最も活発なRaaS集団の攻撃手口
概要
セキュリティ企業Zensec(旧Solace Cyber)が、ランサムウェア集団「Qilin(キリン)」の攻撃手口に関する分析を公開した。同集団はリークサイトで公開した被害組織が累計1,900件を超え、2026年第1四半期時点でも月100件以上のペースで被害を出し続けており、あらゆる公開ランサムウェア追跡サイトで首位級となっている。RansomHub、LockBit、ALPHV/BlackCatといった摘発・崩壊した集団のアフィリエイトを吸収し、2026年に入って最も活発なRaaS(Ransomware-as-a-Service)オペレーションと評価されている。
本分析は、Zensecのデジタルフォレンジック・インシデント対応(DFIR)チームが2022年半ば〜2026年にかけて実際に対応した複数の事案に基づく観測結果である。
Qilinの背景
Qilinは2022年に「Agenda」という名称で初登場し、その後リブランドと再ツール化を経て現在に至る。攻撃モデルは**二重恐喝(ダブルエクストーション)**で、まずデータを窃取し、次にシステムを暗号化する。RaaSプラットフォームを運営し、アフィリエイトは身代金の80〜85%を受け取り、残りをペイロード・インフラ・リークサイト・交渉ポータルを提供する運営者が取得する構造となっている。
概要
セキュリティ企業Zensec(旧Solace Cyber)が、ランサムウェア集団「Qilin(キリン)」の攻撃手口に関する分析を公開した。同集団はリークサイトで公開した被害組織が累計1,900件を超え、2026年第1四半期時点でも月100件以上のペースで被害を出し続けており、あらゆる公開ランサムウェア追跡サイトで首位級となっている。RansomHub、LockBit、ALPHV/BlackCatといった摘発・崩壊した集団のアフィリエイトを吸収し、2026年に入って最も活発なRaaS(Ransomware-as-a-Service)オペレーションと評価されている。
本分析は、Zensecのデジタルフォレンジック・インシデント対応(DFIR)チームが2022年半ば〜2026年にかけて実際に対応した複数の事案に基づく観測結果である。
Qilinの背景
Qilinは2022年に「Agenda」という名称で初登場し、その後リブランドと再ツール化を経て現在に至る。攻撃モデルは**二重恐喝(ダブルエクストーション)**で、まずデータを窃取し、次にシステムを暗号化する。RaaSプラットフォームを運営し、アフィリエイトは身代金の80〜85%を受け取り、残りをペイロード・インフラ・リークサイト・交渉ポータルを提供する運営者が取得する構造となっている。
攻撃チェーン(主な観測結果)
初期侵入
主要な侵入経路は境界のVPN機器。Fortinet SSL VPN、SonicWall SSL VPN、Cisco AnyConnect、および外部公開されたRDPが悪用されていた。共通する要因はMFAの欠如、脆弱・使い回しのパスワード、アカウントロックアウト未設定、未パッチのファイアウォールである。特にCisco ASAの脆弱性CVE-2025-20362およびCVE-2025-20333が挙げられている。
探索(Discovery)
Advanced IP ScannerとAdvanced Port Scannerがほぼ全事案で使用。NetScan、PowerShellによるAD列挙(Get-ADComputer)、pingスイープなども補助的に用いられた。防御側が滅多にブロックしない市販ツールで構成されている点が特徴。
権限昇格・認証情報アクセス
LSASSメモリダンプ(タスクマネージャーのGUI機能を悪用)、Mimikatz(半数以上の事案で確認)、DCSync攻撃、SYSVOL内のGPOパスワード探索、NTDS.ditの窃取などが観測された。
永続化・C2
RMMツールの悪用が中心。MeshCentral/MeshAgent、Splashtop、RustDesk、AnyDesk、Ateraなど。加えてRDPトンネリング用にOpenSSHを利用するケースも。
横展開
SSL VPN帯域からのRDPが全事案で確認。Impacketのpsexec.py、PsExec、ESXi/NAS向けのSSHが使われた。
収集・持ち出し
WinRARや7-Zipで.rar形式に圧縮後、Rclone(SFTP)、Cyberduck(Backblaze B2)、MEGAcmd(MEGA)、FileZilla(攻撃者管理のFTP)で持ち出し。検知回避のため帯域制限(例:500Mbps上限)も施されていた。
防御回避
コントロールパネルからのアンチウイルス手動アンインストール、GMER、HideUL.exe、Windows Defenderの無効化、イベントログの消去など。ただしハイパーバイザー上で直接暗号化する場合は、そもそも回避が不要となるケースも多い。
暗号化・影響
Hyper-Vホスト、ESXiデータストア、バックアップサーバー、NASを標的とする。デスクトップとログオン画面の壁紙を「Your system has been blocked by Qilin Ransomware」に変更し、ネットワークプリンターから身代金要求文書を印刷させる事例も現地で確認された。再起動後も暗号化を継続するレジストリキー(自動起動)を作成する点も特徴。身代金要求文書は各フォルダにREADME-RECOVER-[10文字].txtとして設置される。
暗号化後の恐喝
被害組織の経営幹部宛に一斉メールが送られることがあり、送信元ドメインはbizalerts[.]de、件名は「Final reminder: Data publication planned in X days」など。データはTor上のリークサイト(DLS)に段階的に公開されるが、「公開済み」と表示されても実際にはデータが掲載されないケースもあり、一貫性は乏しい。
主な対策(推奨事項)
Zensecは全組織向けに以下を推奨している。
- 外部公開のファイアウォール・SSL VPN機器を最新ファームウェアに保ち、CVE-2025-20362/20333など実際に悪用されている脆弱性を優先対応する
- 全SSL VPN・リモートアクセスアカウントに例外なくMFAを強制する
- インターネットへの直接RDP公開を排除し、VPNや堅牢化した踏み台の背後に配置する
- ファイアウォール/SSL VPNとADの両方でアカウントロックアウトとブルートフォース対策を適用する
- ドメイン管理者権限アカウントがSSL VPNに認証できないようにする
- EDRを全資産(サーバー・ハイパーバイザー管理ホストを含む)に展開し、改ざん防止(テンパープロテクション)を有効化して特権ユーザーによる無効化を防ぐ
- Credential Guard / LSA保護(RunAsPPL)でLSASSを保護する
- SYSVOLから平文・GPPパスワードを削除する
- 承認済みRMMツールの許可リストを整備し、それ以外を検知・ブロックする
- ESXi/Hyper-Vを堅牢化(不要時はSSH無効化、ロックダウンモード有効化、管理を専用セグメントに制限)
- バックアップはドメイン外に保管し、少なくとも1つはイミュータブルなオフサイトコピーを保持する(3-2-1ルール)
- MEGA、Backblaze B2、任意のSFTP/FTPなど、持ち出しに使われるクラウドストレージへの外部通信を監視・制限する
なお、元記事にはASN、ファイルハッシュ(SHA-256)などの詳細なIOC(侵害指標)一覧やMITRE ATT&CKフローマップも掲載されている。Advanced IP/Port Scanner、Rclone、WinRARなど正規ツールも含まれるため、自環境で照合する際は誤検知に注意が必要とされている。
出典
Zensec「Unmasking Qilin: The Ransomware tactics you can't afford to ignore」(2026年7月7日) https://zensec.co.uk/blog/unmasking-qilin-the-ransomware-tactics-you-cant-afford-to-ignore/
記載者:片山 昌樹(セキュリティ&マネージド事業部 アイズオンフォレンジックチーム)